ねりま子育てネットワークによる講座 『子どもも自分もウェルビーイングな地域とは』
に参加してきました。※練馬区教育委員会委託 子育て学習講座
(12月15日、練馬文化センター地下1階)
ウェルビーイング、最近よく聞く言葉ですが、どういう意味だろう?
こども、子育てに活かせることは?
地域で子育てという、ねりこその理念とはどう重なるのだろう…?
そんな思いから、講座を受けてきました。
講師の小澤いぶきさんは、
児童精神科医、精神科専門医であり、一般社団法人Everybeingの代表で、
NPO法人PIECESの創設者でもあり…と、多方面でご活躍。
こども家庭庁アドバイザーとして、国のこども政策にも関わっています。
ご自身も3歳のお子さんを育てていて、当事者と専門家の目線から、わかりやすく深いお話をしていただきました。
≪こどもを取り巻くさまざまな状況≫
日本の子どもたちの「精神的健康」は38か国中、37位(UNICEF調査)。
小中学生の約10%にうつ症状があり、10代の死因の1位は自殺 ……など、
聞くだけでつらいようなデータ。これが、今の子ども達の現実です。
■子どもの権利、日本でどのくらい知られている?
そんな状況のなか…
子どもの約3割、おとなの約4割が「子どもの権利条約」を「聞いたことがない」と答えています。
大人のほうが低いことに驚きます!
■「子どもの権利が守られてないと思うとき」
子ども自身に、「子どもの権利が守られていないのはどんな時?」と調査。
その回答のなかには、たとえば、
>「子どもだから」とか「子どもの考えなんて」とか言う理由で子どもが頑張って意見を述べても相手にしてくれない大人が多いから。
という、16歳男子の回答など。
日々の子育てのなか、どれだけ子どもの声を聞けているか 子どもの権利を守れているか、
おとなとして、我が身を顧みます…。
■「まわりの子どもの権利で守られていないと思うものは?」
という調査では、
「子どもは自分に関することについて自由に意見を言うことができ、大人はそれを尊重する」→11.9%
「子どもはどんな理由でも差別されない」→11.3% が上位に。
とても低いですね……
■そもそも「子どもの権利」って? そもそも、子どもの権利とはなんでしょうか。
子どもの権利とは…
・すべての子どもたちが健やかに、1 人の人として育つために生まれながらに平等にもつ「あたりまえ」のこと。
・誰もが生まれたときから持っているもの。
のこと。
そのなかで子どもは、「成長・発達途中」という特別な過程にありながら、力ある権利主体でもある
→だからこそ、特別な権利として定められている!
子どもは保護される対象というだけでなく、一人の人間として、自分に関わることについて決められる「権利の主体」
…そう考えることが、とても重要とのことです。
54 条ある「子どもの権利条約」の中でも、大切な原則が、以下の 4 つ。
1. 命を守られ成長できること
2. 子どもにとって最も良いこと
3. 意見を表明し参加できること
4. 差別のないこと
■日常の中で、中でも、3の意見表明権は、日本ではなかなか守られていませんが…
たとえばスウェーデンでは、校庭の遊具を設置するときに、子どもたちの声が反映されたり。
日常と切り離すのではなく、生活の中で、声が聞かれることで、権利を知り、体験していくことが大切です。
■権利の相互尊重
自分の権利が大切にされる中で、子どもは「相手の権利を大切にする」こと、「互いの権利をどう尊重しあえる」を考え、学んでいきます。
相手の権利を大切にするためにも、自分自身の権利が守られていることが大切なんですね。
【ここまでのまとめ】
★子どもの声は、今の社会の現状や権利の現状を教えてくれている。
★子どもの権利や尊厳には誰もが関わっている。
子どもの権利や尊厳が奪われたり大切にされていないことが日常の中で、気付かぬうちに起こっていることがある。
≪子どもの心とウェルビーイング≫
続いて、ウェルビーイングについて教えていただきました。
■心の健康とは
心の「病気」か「病気でない」かは、はっきり分けられるものではなく、連続したものであり、「グラデーション」。 心の状態は、揺れて変化するというのが、前提です。
■「人に頼る」ことは、実はとても主体的な行為
「何かあったら相談しましょう」 というけれど、相談のハードルはとても高いもの。
1)自分の悩みや困りごとの輪郭が自分でわかる
2)相談する相手の顔が思い浮かぶ
3)相談しにいく
といったエネルギーを必要とするそのハードルは、少ししんどい時にはさらに大きなハードルとなります。
子どもが主体的でいられる環境にない、主体性を身に付けられる状況にないと、 簡単ではないことですね。
■ウェルビーイングとは?
「幸福」というよりもっと根源的で、 「私とは何者か?」に近いものだと、小澤さんは言います。
■子どもの well-being に関わる3要素
1.楽観性
2.ここにいて大丈夫だという感覚
3.主体的に社会に関わっている・働きかけられる感覚
という3要素が、子どものウェルビーイングに関わっています。 子どものウェルビーイングには「大人とのよい関係」が必要です。
■子どもの人生に影響する因子 「阻害因子」→減らせるとよいこと
例)マルトリートメント、いじめや戦争、環境汚染など
「保護因子」「促進因子」→あるとよいこと
例)子どもにとってサポーティブな関わりや環境。例えば、困難時のサポートや支えてくれる友人、親以外の支持的な大人…など保護因子を、地域で、練馬で、いかに増やしていけるかが、大切ですね。
■個人の性質と環境の相互作用
友達、家族、学校や園、地域社会などは、それぞれ互いに影響し合い、ウェルビーイングを形成し ています。
安心、安定した家族で育てる子どもだけではないからこそ、地域社会が大切ですね!
【ここまでのまとめ】
★日常的な場面での安全の喪失の積み重なりが、子どもの発達に影響を与えることがある。
★体験がどのように子どもの人生に影響していくかは、子ども自身の性質と環境の相互作用によるが、環境は市民の力で変えていくことができる。
★今この瞬間目の前にいる子ども自身と共にあることを積み重ねていく。
★正解がないからこそ、迷い葛藤しながら共にあり続ける。
≪トラウマインフォームドケア≫ ■メタ認知
認知発達について学ぶワークを実践。 「いざこざがあり、嫌だ!と感じた時、『言葉を使わずに』表現してください」 というテーマで、みんな、地団駄を踏んだり、イヤイヤしたり…
言葉以外の様々な表現でいろんな声を教えてくれている子どもの気持ちが、わかったように思います。
■トラウマインフォームドケアの視点
「トラウマ」はよく聞く言葉ですが、 子どものトラウマの特徴やケアについても、解説いただきました。
■危機の時の子どもの特徴
・いつもできていたことができなくなったように見える
・おねしょが多くなる、夜眠れなくなる、一人で遊ばなくなる
・甘えたがる・一緒にいたがる
・くっつきたがるロ 発達が後戻りしたように見える
・赤ちゃん返りする、夜泣きをするロ遊びを通して対処・表現する:ごっこ遊び
・身体や行動の変化として表現されることも少なくない
・発達の特徴を持つ子どもは、その特徴がより強く現れることがある
…など
■トラウマ体験後のこころを守る環境
「どんな体験として意味づけられていくか」が、とても重要、とのこと。
★ここにいて大丈夫・安全で自分にとってちょうど良い繋がりがある感覚
★明日も明後日も、もっと先もきっと大丈夫・なんとかなる感覚
★自分の主体が大切にされる主体的に社会に関わっている・働きかけられる感覚
これらは、子どもの主体性、子どもの権利に関わることですね。 他にも、具体的な対
処法や声がけについて、たくさんレジュメに書いていただきました。
■誰もが心にケガをする
心にケガをする、それは自然なこと。 だからこそ、大人が、普段と違うところなど、解像度をあげて事実を「観る」、そして子どものサイン を受け取ることが大切だと言います。
それだけでなく…
「子どもの話を聴く人も、心を怪我する」 「自分の心をケアしたり、自分にとっての心地
よいことの時間も大切にしてください」 「一人でなく、チームで。一人で頑張らずに、誰
かと共に」 という、小澤さんのやさしい言葉が、心に響きました。
子育てのこと、子どものこと。 ひとりで悩まず、頑張りすぎず、誰かと一緒に、地域で
…… という視点、とても大切ですね。
こどもがその子らしく育つために、 こどもの権利が本当に大切だとわかりました。
大人自身がもっともっと、子どもの権利について学びつつ、 大人も、自分自身を大切にしなくてはですね!
対話の時間もたくさんあり、 各グループの話し合い、とても盛り上がって話が尽きない様子でした。